追記〜トランス女性の一見解 - 帰ってきたみふ子の真夜中日記

※反応について

前回の記事についてツイッターやレスでいくつか反論をいただきました。ただ筆者はここで論争をするつもりはありません。本件に関しましては、書かれていることがすべてです。

たとえば、わたしが「αという問題についてはこのような理由から""通常は""、""基本的に""Aと考えられる」ということを言った場合、「αに関連してβの問題についてはどうなんだ」と聞かれても、そちらはそちらでまた繊細な議論が必要である以上、勉強不足のためわかりかねますとしか申し上げられませんし、「問題αについてはBというケースもある」と言われても、ケースBが発生したと伝えられている背景、状況、文脈をくわしく把握しなければ何も申し上げられません。たとえば、下つきのMtFは基本的に女風呂には入りたがらないとさきに書きましたが、トランス女性が親友の複数のネイティブ女性と小さな田舎の温泉民宿に行き、その温泉宿が貸切状態であった時などはどうでしょう。親友の同意や誘いがあれば、トランス女性が女湯に入るのを非難するのは難しいのではないでしょうか。わたしもそうですが、カミングアウト済みのトランス女性とネイティブ女性が濃密なフレンドシップを結んでいることは非常に多く、これは実際に十分ありうるケースと思われます。

それにわたしは「基本的に」「通常は」と述べております。どうか汲んでいただければと思います。わたしは平穏な生活を願うひとりのMtFとして、当事者の素朴な感覚を書いたにすぎません。

hatehate555kunさんのレスは大変参考になりました。読み込んでくださってありがとうございます。

※静かな怒りを覚えながら

何人かの当事者から「アンチに妥協しすぎでは」という声が上がったように、わたしはこの問題に関してはきわめて穏健な姿勢を取っています。「マジョリティ側がパス度で""切る""ことを容認するのか」との当事者内部からの批判には、わたしも若干苦しい顔をしなければなりません。苦しい顔をしつつも、いくつか申し上げたいことはないでもないですが、しかし、それはまた別の話になってきます。いずれにしても、粘り強い対話が必要であるかと思います。しかしその場合の対話の相手は一部の過激なアンチトランスではありません。

もうこの際ですから、怒りを込めて、はっきり言いましょう。連中は当事者の声を聞く気などありません。彼らは我々の存在そのものを認めていないのです。表向き綺麗なことを言っているように見えても。

話をしても、こちらの精神がボロボロになっていくだけで何の合意も何の進展も得られません。ですので、SNSで彼らと議論をしている当事者の方には、どうか無理をなさらないで、と申し上げたい。わたしも言い分は穏健なものに抑えているとはいえ、あちら側の姿勢には静かな怒りをふつふつとためています。その怒りの結果がこないだの文章でした。

「性自認ではなく、身体で性別は決まる。トランス女性は女性として認められないし、女性専用スペースの利用は認められない。なぜなら、男体には、ペニスには、XY染色体には加害の歴史があるから」

なるほど、MtFにそのようなご感想を個人が持つのは自由です。内心は自由ですからね。発言するのも……しょうがないでしょう。内輪でなら。しかし次にこのような発言を見ると、ふつふつと怒りが湧いてくるのです。

「男性の中の多様性、女性の中の多様性が増えて特定の服装やふるまいにどちらかのジェンダーのレッテルが貼られなくなれば、こういう議論もしなくて良くなる」

いかにも自分は物分かりの良い進歩的考えの持ち主だ、とでもいいたげなこの論ですが、首を縦に降る当事者はきわめて限られるのではないでしょうか。つまり、MtFは男性の多様性に包摂されればよいと言っているのです。スカートを履いた「男性」も男性として認められるべきと。しかも、そのようにしてMtFの人権が「多様な男性」として保護される世界はいったい何百年後の話なのでしょうか？

ジェンダークリニックには、毎日たくさんの当事者がホルモン注射を受けにきます。トランジションの進行度合いに違いこそあれ、生まれの性とは違う性への移行をするために、薬物を体内にみずから入れるのです。さらにあるものは身体を切り刻み、あるものは性器を切り落とします。当事者たちにとってこの粗雑なジェンダー進化論が、欺瞞でなくて何なのでしょうか？

また、アンチトランスはこのようにも言います。

「トランス女性が女性として認められると、『真の女性身体者』が受けている様々な不利が統計から見えにくくなる。」

もうこれに至っては「何が何でも差別を正当化したいんだな」と乾いた笑いしか出てきません。SNSに書き込むくらいですから、Google検索くらいはできるでしょう。「性同一性障害人数」で検索してみてください。2800人にひとり！MtFとFtMあわせてそれなので、そのうちMtFはどれくらいでしょうか？さらに、現状、日本では戸籍上の性別を変更するためには性別適合手術を受けなければいけないので、統計上女性としてカウントされる元男性の全女性に対する割合ははるかに少なくなります。お話になりません。こんな珍妙な屁理屈をぐだぐだと並べて恥ずかしくないのですか？